メディアミックス&ソフトノミックス
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小社、社名の由来
 1988年(昭和63年)メディアミックスという言葉は一般的ではなかった。当時、構想したのは、ビジネスである素材を編集制作して製品にし、素材を含めた資産を骨までしゃぶる方法として、各メディアの特性を踏襲して複合媒体を通したソフトウェアの編集をイメージしていた。
 まもなくマルチメディアという用語が生まれたが、そのソフトウェアは「ソフトミックス」というイメージだった。それはマスコミ業界の隙間で棲息することで、テレビ局と電話通信会社と出版社の複合媒体でのソフトウェアであった。
「ソフトミックス」はメディアミックスでもあったが、昭和60年(1985年)わが国がバブル経済に突入しようとしていた年に【ソフトノミックス】は、偉大な成果をあげて結果を出そうとしていた時期でもあった。
【ソフトノミックス】は高度成長経済を総括し、21世紀への展望を描こうとしていた。この概念を私的に使用するには恐れ入ることで、今では赤面する。
 この【ソフトノミックス】が展望されてから、今年で20年、22歳で新入社員であった40代の第一線のビジネスマンは、この【ソフトノミックス】の大構想すら知らない。
 戦後、わが国経済を指導した学者や実務家によって、それは研究された。今こそ中堅の40代にそれを伝えるのが、ぼくたちの大きな仕事ではないか。
 21世紀という未来への実務的な構想を研究した思いを、次世代へ継承したいと思った。
 そしてソフトウェアの「現」領域から産業として自立できるメディアミックスのコンテンツ(情報部品)という「新」領域を目指した。事業化したのは、メディア間を横断(転換)するトランスフォーメーションというべき、トランスクライビィングのテクノロジーその他を開発することであった。
 小社へ送られてくる手紙や通信に「ソフトノミックス」と正しく表記されてくるのを確認しながら、注意・不注意の仕事ぶりを観察したこともあった。
【ソフトノミックス】という用語を提唱したのは、当時、大蔵省大臣官房審議官 長富 祐一郎氏であった。勝手に使用して恐れ多く思っています。
 そして、再び関係されたみなさまに敬意を表したいと思います。
 長文で、恐れ多いことですが、大蔵省委託研究 ソフトノミックス ファローアップ研究会報告書『ソフト化社会における人間性の見直し』藤竹 暁先生のチームの序文から全文を引用し、みなさまのご参考にしていただければと思います。



序文

 近代化とは、何だったのだろうか。それは人類に何をもたらし、近代化を達成した先進諸国において、人々はこれからどういう途を選択しようとしているのだろうか。それは、発展途上国や地球社会にどのような影響を及ぼすだろうか。
  
※拙書「近代を超えて―故大平総理の遺されたもの」(1983)
 近代化について、これを広く解し、国家化・産業化・情報化の三段階と解する考え方もあるが、通常は、近代化は産業化=工業化を意味する、と理解されている。
 近代化・産業化の過程で、経済は科学技術の進展と軌を一にし、軽工業化から重工業化へと発展し、それは、人類に物的豊饒をもたらした。1950年代にアメリカが、1960年代に西欧先進諸国が、1970年代に日本が、「豊かな社会」に到達した。
  
※J.K.ガルブレイス「ゆたかな社会」(1958)
 しかし、その過程で、人間性や自然環境との調和は、ともすれば看過され、確立された個は孤独な個ともなり、孤独なアメリカ人とかイギリス病といわれるように、「先進国病」を発生させ、社会の活力を低下させた。
 このようななかで、人々は、自然などとのかかわりあいを重視し、生活の質の向上を求めるようになっている(内在的要因)。
 人工化・機械化のハード・パスを追求した科学技術は、人類の生活領域を質的にも量的にも拡大し、豊かな社会をもたらした。しかし、無限に可能と思われた「量的拡大」は実は有限であり、それは、「地球の有限容量の壁」に突き当たり、オイル・ショックや公害に典型的な例をみるように、資源・環境問題の発生など、人類の生存条件を悪化させた。
 科学技術の停滞がいわれるようになり、ハード・パスは転換を余儀なくされ、地球環境の尊重や科学技術の質的拡大が求められるようになっている(外部的要因)。
  ※ローマ・クラブ「成長の限界」(1972)
   ダニエル・ベル「脱工業化社会の到来」(1973)
   ジョン・ネイスビッツ「メガトレンド」(1982)

 昭和58年6月、大蔵省からの研究委託を受けて検討を続けていた「経済の構造変化と政策の研究会」(座長 館龍一郎 東大名誉教授)は、「ソフトノミックスの提唱」と題する報告書を発表して、世の大きな関心を集めた。
  ※構造変化研究会報告書「ソフトノミックス」(1983)
   拙監修「ソフトノミックスの提唱」(1983)
 このため、同年9月に、大蔵省は、テーマにより39のチームに「ソフトノミックス・フォローアップ研究」を委託し、精力的な研究が進められてきた。この研究への参加者は、60余名の各分野の優れた学者をはじめ、各界の若手研究者を含め、延べ約460名、参加機関は95に及んでいる。各研究チームの会議開催回数は、現在までに計380回に達している。
 既にコンピュータ・ソフト・システムの研究開発成果は去る4月から、「大蔵省総合情報システム(FIND)」として実施に移されているほか、6月末以降、「ソフトノミックス・フォローアップ研究」の成果は、次々と公表されてきている。
 この研究成果について、世の関心が強いことにかんがみ、できるだけ多くの人々の参考に資するため、これを「ソフトノミックス・シリーズ」として刊行することとした次第である。

 「ソフトノミックス」とは、文明史の新しい方向を示す新しい言葉として、経済学(エコ・ノミックス)の原語であるギリシャ語のオイコス・ノモス(共同社会のあり方)にならってつくられた言葉であり、「ソフト化社会のあり方」を考えよう、という意味をもっている。
 前近代はソフト・パス(自然の途)、近代化・産業化の時代は、ハード・パス(人工の途)といわれ、これから選択される新しい途として、ホロニック・パス(調和の途=ハード・パスのソフト化)が、提唱されている。
 この新しい途は、前近代(ソフト・パス)に戻ることを意味するものではない。それは、近代化・産業化の成果を継承しつつ、その問題を克服し、ハードとソフトの新たな調和、人間と人工と自然との調和ある共存を求めるものである。(ハードは必要であることを念記しておきたい。)

 近代化の時代から新しい時代への大きな文明史の転換を一言でいうならば、それは「均一な供給から多様な選択へ」ということであろう。
 西欧において近代化・工業化を推進した原理は、科学技術の面では「原子論・アトミズム」であり、政治・社会・経済の面では「個人主義・インディヴィデュアリズム」であったといわれる。アトムとインディヴィデュアルとは、ギリシャ語とラテン語の違いであり、意味は同じで、それは「要素還元主義」といえるであろう。
 全体を「均一な」要素・個・機能に還元することにより、均一な機械的処理が可能となり、機械化・人工化が進み、学問も専門分化し、様々な分野で集中化・集積化・巨大化が進行した。
 経済においては、人々の均一なニーズを前提に、均一な商品をいかに速くいかに大量に生産するか、機械的処理・機能主義により、規模の利益が追求され、「マスプロ」が志向された。
 政治においては、一票の価値は同じと「均一な個」を前提とし、多数決原理が採用された。近代建築や都市設計においても、工場やブラジリアにみられるような機能主義が追求された。近代西欧医術においては、人体の各部を「均一な互換可能な部分品」とみることによって、臓器の交換・移殖・人工臓器などの技術を発達させた。雇用においても、人を「均一な機能・互換可能性部品」とみたてる発想は、職能としての雇用を行い、職能別組合を発達させた。
 このような欧米のアトミズム的発想の基礎には、二分法(ダイコトミー)があり、Aと非Aと二者を峻別・対比し、二者を力により「統合」するといわれる。これに対し、「人間」という言葉にみられるように、人と人・人と自然など相互の間柄・かかわりあいを大切にする日本では、みんなの顔が立ちまるく治まるように「総合」が好まれる。こうして日本においては、個人主義はタテマエの世界におかれ、「間柄主義・人間主義」がホンネの世界で強く働いて、それが日本社会の活力となり、近代化・工業化を成功させてきた、といわれる。
  ※林屋・梅棹・多田・加藤「日本人の知恵」(1962)
   村上・公文・佐藤「文明としてのイエ社会」(1979)
   濱口恵俊「間人主義の社会 日本」(1982)

 「ソフト化」とは、大きな文明史の新しい潮流を意味している。それは、それぞれの局面で、情報化・サービス化など、いろいろな現象となって現われているが、その根は一つということを理解しないと、社会・経済の構造変化の方向を読みとれないであろう。
 ソフト化については、次の四つの特徴が指摘される。
(1) 情報化・知識集約化・・・科学技術・生活のソフト化
(2) 人々の意識の変化・・・・文化的・精神的豊かさへ
(3) システムの変化・・・・・小規模・分散型の見直し
(4) 経済のソフト化・・・・・サービス化・軽薄短小化

 なお、ソフト化を情報化とサービス化の二つとしてとらえ、意識の変化とシステムの変化は、分析すれば、当然にこの二つに含まれる、としてとらえる考え方もある。この場合には、たとえば、次のようになる。
 ・情報化・・・・超産業化(脱産業化の第1段階)
                   ・・・手段(まじめ)化
 ・サービス化・・脱産業化(脱産業化の第2段階)
                   ・・・即自(あそび)化

 四つの特徴を極めて簡単に述べれば、次のとおりである。
(1) 情報化・知識集約化
・ 科学技術のソフト化・質の向上
 産業革命以降の機械化を中心としたハード・テクノロジーから、公害・麻薬・人種・都市問題などさまざまの分野で、相互のかかわりあいを重視したソフト・サイエンスが発達してきている。
 また、量的拡大から質の向上へ重点を移行して、科学技術のソフト化・ファイン化・メカトロ化が進展し、ファイン・テクノロジーやファイン・セラミックスなど新素材、さらに将来にはバイオ・テクノロジーの進展など、先端技術が発達してきている。
  ※アルビン・トフラー「第三の波」(1980)
・ 生活のソフト化・質の向上
 情報化・知識集約化を、科学技術の発達の視点のみでとらえず、社会的・経済的意味を考えることが必要である。情報技術の発達は情報化を支えるものであるが、情報化そのものではない。
 文化的・精神的満足を求める動きのなかで、宅急便などきめ細かなサービスの提供が情報技術の発達に支えられていることや、デザインなど物自体のソフト化にも注意する必要があろう。
(2) 人々の意識の変化
 豊かな社会のなかで、人々は、「真の豊かさとは何か」と、豊かさの問い直しを行っている。
  ※デニス・ガボール「成熟社会」(1972)
 量の充足から質の向上へ、人間性の回復を求め、文化的・精神的豊かさを求ある動きである。
 総理府が昭和33年から実施している「国民生活世論調査」によると、高度成長時代には、心の豊かさより物の豊かさを求める人が多かったが、昭和51〜53年に両者が40〜41%で肩を並べ、それ以後は次第に心の豊かさを求める人が増え、昭和57年には心の豊かさ45%に対し物の豊かさ38%となっている。また、総理府の59年2月の別の調査によると、20年後の予想では心の豊かさ64%、物の豊かさ29%となっている。
 ヨーロッパ価値観システム研究グループは世論調査の結果、ヨーロッパ人は「物質・生産・技術」という言葉にある種の拒絶反応を示すようになった、と報告している(昭58.1.31付朝日)。
 インダストリー(産業)という言葉は、そもそも勤勉・勤労という意味である。産業革命以降の近代化・産業化の時代は、まじめに働くという「物の生産」の原理が、社会的価値観において支配的であったといえよう。
  ※マックス・ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904〜5)
 よりよい「生活」=「消費」を求める動きのなかで、近代を超える時代は、産業化(手段化・まじめ化)から生活の重視(即自化・あそび化)へと、「消費」の見直しが行われ、生産と消費の価値観の新しい調和が生まれてこよう。
 豊かな社会のなかで、人々は、これまでの受け身の均一さを求める姿勢から、個性化・多様化を求めるようになっている。それは、みんなと同じであるよりは違いを求める動きであり、自発的に多様な主体的選択を行うようになってきている。
 このような人々の生活関心・価値観の多元化は、消費者のニーズの多様化を招来する。物が不足していた高度成長時代には、人々のニーズは「均一」であり、昭和32年には「三種の神器」(白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫)が、昭和41年には「3C」(カラーテレビ・クーラー・カー)が、人々の均しく欲する物であった。
 しかし、いまやこのようなことはない。若者をはじめ主婦やOLも、ブランド商品の一括買いをしなくなり、単一ブランド商品の売り場面積が縮小され、ノー・ブランド商品が現われている。
 マスプロのジーンズから手づくりのジーンズへ、という動きは、マスコミ(均一情報の大量提供)にも影響し、受け手の多様な選択のなかで、多様な情報提供が求められるとともに、受け手が関心のある情報を主体的に選択するための雑誌「ぴあ」がベスト・セラーとなっている。求職も、週刊就職情報やアルバイト・ニュースなどにより、買物にも、JJのような情報誌からさらにクチコミへという動きがみられる。
 このようななかで、政府の政策も、均一な社会的価値観・目的による画一的な政策(富国強兵・殖産興業、高度成長・景気振興)から、多様な自発的価値観・目的によるものが求められ、人々の主体的な多様な選択の時代に、民間活力の活用や負担との選択など、経済政策・社会政策の問い直しが要請されている。

(3) システムの変化
 近代化・産業化の過程においては、均一な・機械的処理が行われ、スケール・メリット(規模の利益)が追求され、科学技術が巨大化するとともに、企業も大企業化し、都市化が進行し、国家・社会システムも中央集権化した。
 しかし、いまや消費者のニーズの多様化のなかで、マスプロの時代から、多品種少量生産の時代へと移行してきている。スケール・メリットの有効性は減退し、大企業に有利であった時代から、消費者のニーズを、いかに早く先取りするか、新しい商品を提供することによっていかに開発するか、機動力のある中小企業に有利な局面が展開されてきており、中小企業の特性が見直されてきている。
 このようななかで、東京的サラリーマン大企業に対する関西系企業の台頭がみられ、1人当たり経常利益上位20社に占める関西系企業の数は、昭和52年に9社、57年には13社と増加してきている。
 テイラーの科学的管理法から人間性の見直しへ、というように、合理化・効率化・生産性の向上といった機能主義は、様々な分野において見直しが行われ、それは人間性の回復を求める動きとなっている。
 西欧医学においても、人を人間存在そのものとして考察しようと、医学に社会学・社会心理学・文化人類学までも含めたヒューマン・バイオロジー(人間医学)が台頭してきている。
 建築や都市設計においても、機能主義への反省から、いま「人間的空間とは何か」が問われ、ハードな地域開発から「人間と人工と自然との調和ある共存」へと、人と人との触れ合い・人間性の回復が求められている。
 情報は集中する傾向をもつとともに、情報技術の発達は分散型システムの有効性を高める。このため、情報化は、システムの集中・分散の同時進行をもたらし、多くのシステムを集中・分散型システムに移行させていくことが予想される。日本型システムは、本来、集中と分散の調和型(リゾーム・総合型)であるともいわれる。
 地方の時代といわれるように、国家・社会システムも、集権型から「分散型」システムの見直しが行われてきている。
 集中・分散の調和型のなかで、日本の国家・社会システムについても過度の集中型がとられたのは、外国の文明を大いにとりいれる必要があった律令化と近代化の時代だけであった。
 いまや、国家の枠組みにとらわれない世界交流が盛んに行われ、国家イメージの矮小化とか面白い国家の終焉ということがいわれている。
 近代化・産業化のなかで様々な機能を要請され、中央集権化が進み、大きな政府として成立してきた、「近代国家」そのものの問い直しが行われている。
 行財政改革・政府規制の緩和・民間活力の活用・自由化・国際化は、このような動きであり、大きな歴史の潮流のなかにおける時代の要請にほかならない。

(4) 経済のソフト化
 経済のソフト化という場合には、次の三つが指摘されよう。
 ・ サービス化
 ・ 物自体のソフト化
 ・ 軽薄短小化

 これらを、いくつかの点について、簡単に触れておこう。
1 サービス産業を中心とした第3次産業の比率の増大
 この比率は、アメリカで7割弱、イギリスで6割強、日本とフランスでは6割に達している。
  ※コーリン・クラーク「経済進歩の諸条件」(1940)
 日本では、そのうち卸・小売業と狭義のサービス業の比率は半分強で、経済全体のなかでは3分の1であるが、これが2000年には5割になると、サービス産業のいっそうの拡大が予想されている。
  ※経済企画庁長期展望委員会「2000年の日本」(1982)
 OECDが「インヴィジブル・エコノミー」(不分明経済)として提起したように、新しい分野で発達している新しいサービス産業など、不分明経済の実態把握が統計上も必要である。
2 経済のソフト化の進展……ソフト化率の上昇
 製造工程におけるデザイン・広告・マーケティングなどの情報や高性能化のための非物的投入額をソフト化率としてとらえると、この比率は著しく増加している。
3 雇用におけるソフト・サービス産業の拡大と女性の進出
 日本は、昨年秋頃まで、前年同月と比べた就業者の増加は、サービス業だけで60〜70万人であり、この結果、雇用情勢は厳しいといわれつつ、就業者は全体として高度成長期を上回るほどの100万人前後の増加を続けていた。このうち、女性が70万人程度の増加を占めていた。
4 消費におけるサービス化・ソフト化
 家計の最終消費支出に占めるサービス支出の割合は、昭和45年の42.4%から55年には49.1%と、ほぼ半分になっている。
 同時に、物への支出も、高性能化・高ファッション化など、物自体のソフト化に伴い、質の向上への支出割合が増加していることに注目する必要がある。このため、物が売れても額面通りの物による好況感が伝わらなくなってきた。
5 ソフト化による経済成長・景気変動のマイルド化
 人々は、現在の生活水準をできるだけ落とさぬように行動するであろうが、物がひととおりいきわたった状況のもとでは、たとえば電気洗濯機が古くなったがもう1年買替えを我慢しようと、支出を抑制しても生活水準をあまり落とさずにすむのに対し、サービスについては支出を抑制すると生活水準を切り下げることになるので、サービス化の進展は景気に対し安定的に作用することになろう。
6 投資のソフト化
 ソフト化の進展により、今後も、R&D投資やINS投資などのソフト・キャピタルの増加は期待されるものの、サービス産業は、相対的に装置化率が低く、基本的に在庫のない産業なので、全体として設備・在庫投資のウェイトは低下し、投資が投資を呼ぶ、といった高度成長時代のようなことはなくなろう。科学技術のソフト化も、軽薄短小化と、設備・在庫投資のウェイトを小さくしよう。
 また、サービス化の進展のなかで、サービス業(約6割はリース業と推測される)の設備投資のシェアが著しく増大し、サービス業の中小企業だけで、設備投資の大手ご三家といわれた鉄鋼・化学・自動車を抜き、サービス業全体では、別格といわれた電力を上回っていることが注目される。
7 売上高・経常利益も、ソフト・サービス産業好調
 57年度における製造業とサービス業との対比は顕著で、製造業が不振を続けたのに対し、サービス業は売上高・営業利益とも大変な好調を持続していた。
 経済実態の把握、質の計数化など、各種経済統計の見直しとともに、経済指標をどう読むか、新しい工夫が必要になっている。
  ※拙編「どう読む 経済指標」(1983)

 このような先進諸国のソフト化は、今後の地球社会にどのような影響をもつであろうか。
 オイル・ショックまでに「豊かな社会」に到達した先進諸国は、幸運であった。それは、豊かな社会のなかで人々が求めている方向(内在的要因によるもの)と、資源・環境問題の悪化のなかで転換を余儀なくされた方向(外部的要因によるもの)とが、整合性をもっていたからである。その新しい文明の方向が、ソフト化である。
 しかし、まだ豊かな社会に到達せず、これからハード化・工業化(先進国の後追い)をしようとしていた発展途上国は、それに水をさされることになった。
 この結果、先進国が迫られる産業調整への要請が弱まるとともに、それ以降、論調においても、南北問題の稀薄化と先進国間の経済摩擦の喧伝化が生じた。
 恵まれた立場にある日米欧先進諸国は、狭い視野からの摩擦対応ということではなく、地球社会の活力ある発展のために、どのような新しい秩序(ニュー・ルール)をつくるかということについて、積極的に指導的役割を果たすことが求められている。
 いまや、発展途上国も、得意な分野を求めて政策選択の多様化を進めているようにみられる。今後は、先進国・発展途上国も含め、それぞれの民族の得意な分野で協力していくようになるであろう。
 開放系ソフト化社会の構築に向けて、自らの文化の押しつけではなく、それぞれの文化の違い・多様性を尊重し、国家の枠組みを超えた交流のもとに、地球社会の総合的発展が図られていくならば、それは今後の国際協調の望ましい方向であると考えられる。
  ※ソフトノミックスにおける国際的・地球的対応については、境際政策・境際行政研究会「経済摩擦と日本の対応」(1982)

 近代化が成功したいま、欧米においても、日本においても、近代化を成功させた原理の問い直しが行われている。欧米においては、個人主義のなかで個人の多様化と人々の間柄の重視が進んでおり、日本においては、間柄主義のなかで間柄の多様化と人々の個性化がはじまっている。
 今後の欧米社会と日本社会は、「多様な間柄を帯びた個性化」という同じ文化の方向へ向かい、二十一世紀へかけてのソフト化社会に、「柔軟な個人・間柄主義」で対応していくのではないか、と期待される。
  ※村上泰亮「新中間大衆の時代」(1984)
   山崎正和「柔らかい個人主義の誕生」(1984)


 ソフトノミックスの研究は、文明史の大きな潮流のなかで、広い視野から、過去の考え方にとらわれない柔軟な発想で行われなければならない。ソフトノミックス・フォローアップ研究に当たって、経済学はもとより、政治学・社会学・社会心理学・科学技術など、広範な分野の優れた専門家に参加をいただいたのも、このような認識に基づくものである。

 ソフトノミックス・フォローアップ研究については、次の六つの大きなテーマのもとに、理論・実証両面から研究を行っていただいている。
・ 構造変化の分析
 情報化・サービス化といわれる社会・経済の構造変化について、その実態把握の手法や人間生活とのかかわりあいの検討。
・ 科学技術と経済
 科学技術のソフト化の進展と、それが社会・経済に及ぼす影響の検討。
・ 構造変化と経済運営
 経済のシステム・経済活動の変化と、これに対応する経済運営の検討。
・ 構造変化と財政
 財政政策のマクロ経済に及ぼす効果の変化と、政府の役割を含め今後の財政のあり方の検討。
・ 構造変化と金融
 情報化・サービス化・国際化の進展のなかで、金融システム・金利水準の変化と、今後の金融政策の検討。
・ 構造変化と世界経済
 社会・経済のソフト化のなかで、世界経済・貿易・国際金融の変化と、先進国・発展途上国の相互関係に及ぼす影響の検討。

 なお、この研究は、各チームのキャップの先生の指導のもとに、それぞれ独自の考えと分析手法によって行われており、相互に必ずしも調整が図られていないことを、お断りしておきたい。
 最後に、ご指導いただいた先生方をはじめ、研究会参加者、ご協力いただいた方々に、心から感謝を申し上げたい。
 この「ソフトノミックス・シリーズ」が、ひとつの契機となって、「ソフト化社会」の分析と対応について、さらに幅広い議論と実り豊かな検討が行われることを期待している。

昭和59年10月17日

大蔵省大臣官房審議官
長富 祐一郎



要  旨
(出典)
ソフトノミックス・フォローアップ研究会報告書
第1部 構造変化の分析――6
『ソフト化社会における人間性の見直し』
藤竹暁チーム
(大蔵省委託研究会)
創立16周年記念(創立記念日 昭和63年8月31日)――自己実現への道

禅師 山田無文 著『十牛図』 得牛 四
「牛を見つけただけはいかん。しっかりと手綱をつけて我がものにして
しまわんといかん。それが得牛である」
はなさじと思えばいとどこころ牛
これぞまことのきづななりけり




徳力富吉郎(十牛図 木版画)



久しく郊外に埋もれて、今日渠に逢う。
境勝るるに由って以て追い難し、芳叢を恋うて而も巳まず。
頑心尚お勇み、野生猶お存す。
純和を得んと欲せば、必ず鞭撻を加えよ。
(鞭撻とは、やみつきになって座禅がやめられん。禅の警策という意味)


円相マークとともに16年 小社マークの由来――十の四
(株)メディアミックス&ソフトノミックス
東京都町田市山崎町840-1-506


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「空・風・火・水・地といって、世界を構成している五つの要素があります。
この五つの要素を一筆で描くと円になる」。(有馬頼底先生)
 小社マークは私の師匠である、東京・茗荷谷 曹洞禅宗 林泉寺 前住職 故江田和雄老師の一筆(ひとふで・円相)です。
(昭和63年9月 小社創立の翌月、茗荷谷・林泉寺で
一筆をいただきました。小社の宝物です)

未完の完
20数年も前 『うしかひ草』に出合いました。そして、『十牛図』を知りました。
小社マークと共に16年、只今! 道半ば、未完の完。
staff
制作スタッフ

ディレクター

松村 謙(august design Inc.)  瀬川 清(STUDIO SEED)

webデザイン

august design Inc.

オープニングムービー

幸 剛(犬猫舎)

イラストレーション

簑島英太郎

コンポジショニスト

瀬崎貴子

制作協力

川原和子 谷尾雅世 坂上都子 内藤栄子 近藤朝子 仲西春子 鈴木美奈子 市川佐和子 藤平潤子 新井登喜子 中川奈保子 渡辺小百合

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